現在、広島駅周辺の再開発によるマンション建設ラッシュや、郊外の住宅地における世代交代など、私たちの住む街の「住まい」の形は大きく変わりつつあります。

ニュースでは「資材高騰」「金利上昇」といった言葉が飛び交い、


「今、家を買うべきか?」


「実家をどうすべきか?」


と悩まれている方も多いはずです。


今回は、

「広島市の住宅着工件数や不動産の売買件数と、それに比例して不動産登記件数は今後どのように推移していくか?」

というテーマで、少し専門的な視点も交えつつ、これからの広島の不動産市場を深掘りしていきたいと思います。


不動産業界のデータと、司法書士業務などで扱われる「登記」の件数は密接に関係しています。この数字を読み解くことで、広島の未来が見えてきます。

住宅着工・売買件数から読み解く!今後の不動産登記件数はどう推移する?

ここ数年、広島市中心部を見上げればクレーンが並び、新しい高層ビル等が次々と姿を現しています。特に広島駅南口の再開発は、県民にとって最も象徴的な変化でしょう。


一方で、少し郊外に目を向けると、空き家が目立ったり、「売地」の看板が長く残っていたりする光景も珍しくありません。


不動産市場は今、大きな転換期にあります。

「新築がどんどん建つ時代」から、「あるものをどう活かすかor受け継ぐかという時代」

へのシフトです。

住宅着工件数(新築)や売買件数(中古・土地)の動向を分析し、それが最終的に法的な手続きである「不動産登記」の件数にどう反映されるのか、そして未来はどうなるのかを予測します。

1. 広島市の「住宅着工件数」の現状と未来

まず、新築住宅の動きを見てみましょう。

現状:資材が高騰している

全国的な傾向と同様、広島市でも新築住宅の着工件数は「横ばい」または「微減」の傾向にあります。

主な理由は建築コストの上昇です。

ウッドショックに始まり、過度な円安による輸入資材の高騰、そして人件費の上昇。これにより、新築一戸建てや新築マンションの価格は、一般的なサラリーマン世帯の手が届きにくい水準まで上がっています。

未来予測:エリアによる二極化

今後の着工件数は、全体としては緩やかな減少が進むと考えられます。

しかし、広島市特有の事情として「エリアの二極化」が進みます。

  • 中区・南区・東区(駅周辺): 再開発や利便性重視の需要により、高価格帯のマンション供給は続きます。件数は少なくても、一棟あたりの戸数(区分所有建物)が多いため、登記件数へのインパクトは大きくなりやすい。
  • 安佐南区・佐伯区などの郊外: 新規の大規模分譲地開発は減少し、既存の住宅地の中での建替えや小規模な分譲が中心となるが、今後アストラムラインの延伸による利便性を考慮すれば、開発自体の需要は落ちにくい。

2. 「不動産売買件数」の推移と中古市場の台頭

新築が苦戦する一方で、活発化しているのが中古の住宅市場です。

「新築から中古へ」のシフト

「新築は高すぎるが、家は欲しい」という層が、中古マンションや中古戸建をリノベーションして住むスタイルに移行しています。

広島市内でも、築20年〜30年のマンションの取引件数は安定しており、今後も売買件数全体における中古の割合は増加していくでしょう。

3. 「不動産登記件数」との相関関係

ここで、本題である「登記件数」との関係を整理します。

不動産が動けば、必ず登記(法務局への記録)が必要になりますが、その中身は取引の種類によって異なります。

新築の場合(着工件数との比例)

新築が1件建つと、主に以下の登記が発生します。

  1. 建物表題登記(物理的な記録)
  2. 所有権保存登記(最初の所有者の記録)
  3. 抵当権設定登記(住宅ローンを組む場合)

つまり、新築件数の減少は、登記件数の減少にダイレクトに、かつ大きく影響します。

中古売買の場合(売買件数との比例)

中古取引では、以下の登記が主です。

  1. 所有権移転登記(名義変更)
  2. 抵当権設定登記(買主のローン)
  3. 抵当権抹消登記(売主のローン完済)

中古市場が活発であれば、移転登記の件数は維持されます。

不動産の登記件数はどうなる?

今後の広島市における不動産登記件数は、「売買による登記は微減〜横ばい」なものの、「全体としての登記件数は高止まりか、あるいは一時的に増加する」が推測されます。


「え? 新築が減るのに、なぜ登記は増えるの?」

そう思われたかもしれません。

ここに、これからの不動産市場を読み解く最大の鍵、「相続登記」の存在があります。

4. 隠れた主役「相続登記」の義務化インパクト

2024年4月1日から、相続登記が義務化されました。これが登記件数に与える影響はやはり大きいです。

広島に点在する空き家が動き出す

広島県は、持ち家率が比較的高く、かつ山間部や島嶼部だけでなく、広島市内の古い住宅地にも土地建物が多く存在します。

義務化により、これまで放置されていた不動産の名義変更(相続登記)が一斉に行われることになると想定されます。

今後の登記件数の構成比について

これからの数年間、広島の法務局で扱われる登記の構成比は以下のように変化するでしょう。

  • 売買・新築関連: 経済情勢や金利上昇の影響を受け、件数は伸び悩む(微減)可能性。
  • 相続関連: 義務化の周知と高齢化により、件数は大きく増加する可能性。

つまり、景気が良くて不動産が売れるから登記が増えるというよりは、「世代交代による法的整理」のために登記件数が増えるという現象が起きるものと思われます。

5. 今後の市場環境における動き方について


このような市場環境の中で、私たちはどう動くべきでしょうか?


① 「買い時」を見極める

新築価格の高騰は当面続くでしょう。登記件数の推移から見ても、中古市場へのシフトが予想されます。

広島市中心部やアストラムライン沿線など、資産価値が落ちにくいエリアの中古物件買うのも一つです。

また、金利上昇局面にあるため、住宅ローンを組む際、今までは超低金利であった背景から変動金利一択でしたが、

「変動金利か固定金利か」

を慎重に判断する必要があります。

地元の地方銀行(広島銀行、もみじ銀行など)の金利動向をしっかり注視しましょう。


② 実家の権利関係を確認する


もし、広島市内や県内にご実家をお持ちで、まだ相続登記が済んでいない場合は、早急に対応が必要です。

「売るつもりはないから」

と放置していると、将来いざ売却しようとした時に権利関係が複雑すぎて売れない(=登記できない)事態に陥ります。

これからは「売れる不動産」と「上記の様に手放せない不動産」の格差が広がります。その第一歩となるのが登記の有無です。


その他保有資産の登記は必ず済ませておく

今後、郊外の場所によっては売り物件が増加し、需給バランスが崩れる(売り手過多になる)可能性もあります。

人口減少が進む広島においても、需要が供給を上回るエリアは限られてきます。

もし、利用していない土地や建物があるなら、価格が下落しきってしまう前に、市場に出して「所有権移転登記」を完了させることが資産防衛にもつながってきます。

いざというときの為にも、保有している資産の登記は必ず済ませておきましょう。

まとめ

広島市の住宅着工件数や不動産売買件数等は、経済状況や人口動態の影響を受け、今後は緩やかに縮小していく可能性が高いものと思われます。


しかし、それに比例して登記件数が単純に減るわけではありません。

「経済活動としての登記(売買)」から、「資産管理としての登記(相続)」へ


と、その中身が入れ替わっていくのが、今後の登記環境の流れとなっていくものと推測されます。


これから不動産の購入・売却を検討されている方は、単に「価格」だけを見るのではなく、こうした「街全体の動き」や「法制度の変化」等も頭に入れた上で、長期的な視点での決断をおすすめします。