1. はじめに

会社の解散に際して、清算人の選任は法令や定款に基づき、所定の手続きによって行われる重要な決定事項です。清算人は、解散後の財産整理、債務弁済、財産配分などの責務を担うため、その選任は適格性や安定性を重視されます。

しかし、実務上、清算人を選任した後に事情の変化や新たなニーズにより、「変更したい」「新たな清算人に代えたい」と考えることもあるでしょう。

では、既に選任された清算人について、その変更手続きは可能なのか。

可能とした場合の要件や手続きについてみていきます。

2. 法定根拠と制度の枠組み

2.1 会社法・商法における規定

会社法第459条によれば、解散の際に株主総会や取締役会で清算人を選任し、その旨を登記により公告・公示することになっています。そして既存の清算人の変更については、基本的に「新たに選任された清算人の登記」として変更の登記が必要となります。

2.2 変更の許可・手続きの基本的な考え方

既に選任された清算人をそのまま継続させるのが原則ですが、一定の事情で変更が必要なケースでは、法的な手続きに則った変更が可能です。

法律上、「清算人の変更」について明確な規定があるわけではないですが、「新たに選任された清算人の登記申請」を行うことで、その内容を公示することになります。

3. 清算人の変更が可能なケースと要件

3.1 変更が認められるケース

既存清算人に資格喪失事由が発生した場合

・債務超過、死亡、辞任、免職、失踪、破産宣告などの事情により、清算人としての資格や義務を果たせなくなったとき。

当初選任の清算人の職務執行態度や信頼性に問題がある場合

・不正行為、過失、過失、不適切な対応などの理由により、より適格な者に代える必要があるとき。

関係者の合意に基づき新たな清算人を選任する場合

法定の規定や定款により、清算人の変更手続きを規定している場合

4. 清算人変更の手続きの具体的流れ

4.1 既存清算人の辞任(死亡含む)等

まず、辞任届等により清算人の資格を喪失させる手続きを行います。そして、その後、新たな清算人を選任し、選任のための株主総会による決議を行う流れになります。

4.2 変更登記の申請と手続き

登記申請書類の作成

  • 変更事由の記載
  • 新旧清算人の氏名・住所等
  • 選任決議の議事録

・必要書類について

  • 本人確認書類
  • 定款等の選任根拠書類
  • 株主リスト
  • 委任状(代理人に依頼する場合)

5. 変更の効力と留意点

効力の発生タイミングについて

登記官の登記記録の受理・登記完了をもって効力が生じることになります。そのため、正式に登記されるまでは変更は法的効力を持たないこととなります。

慎重な手続きの必要性について

手続きの必要性については、下記要項をしっかり確認する必要があります。

  • 変更が正当な理由に基づくこと
  • 決議や手続きの法的要件を満たしていること
  • 提出書類や証拠の正確さ

6. まとめ

既に選任された清算人の変更は可能ではありますが、そのためには正当な理由と適切な手続きが不可欠です。特に、資格喪失や信頼性の低下などの場合は、辞任届や選任決議を経て、新たな清算人を選任し、登記申請を行うことで正式に変更が完了となります。

また、変更の際には、法定の手続きと決議要件を厳守し、新旧の関係や決議内容が正確に反映されるよう注意を払う必要があります。

したがって、解散後の清算人の変更は制度として認められており、状況に応じて適切な手続きと正当な理由をもって進めることが重要となります。