法人登記における解散登記とは?どのようにするのか?

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解散登記とは→会社の終焉を告げる法的手続き
会社経営において、事業の成功や拡大が目標となる一方で、事業を継続することが困難になったり、経営戦略上の判断から会社をたたむことを選択したりする場面も少なくありません。
その際に必要となるのが、会社の法人格を法的に消滅させるための手続き「清算」です。
そして、この清算手続きの第一歩として、会社の「解散」を登記する「解散登記」が行われます。
本稿では、この解散登記がどのようなもので、どのような手続きを経て行われるのかについて、網羅的かつ詳細に解説していきます。
1. 解散登記の意義と清算手続きの全体像
1.1. 解散登記とは
解散登記とは、会社が事業活動を停止し、清算手続きを開始したことを公示するための登記です。会社の登記事項証明書(履歴事項全部証明書)には、会社の商号や本店所在地、役員情報などが記載されていますが、解散登記がなされると、その会社の状態が「解散」となり、併せて「清算人」の氏名や住所が登記されます。
これは、会社がもはや事業を継続する会社ではなく、残務処理を行う段階に入ったことを外部に示す重要な意味を持ちます。
ただし、解散登記がされたからといって、すぐに会社の法人格が消滅するわけではありません。
解散登記はあくまで「清算開始」の合図であり、その後に続く「清算手続き」が完了し、「清算結了登記」がなされることによって、初めて会社は完全に消滅します。
1.2. 清算手続きの全体像
会社が解散し、法人格が消滅するまでには、一般的に以下のプロセスを経ます。
- 解散事由の発生:株主総会の決議(任意解散)や、合併以外の会社分割、破産手続開始の決定、裁判所の命令など、会社法に定められた解散事由が発生します。
- 清算人の就任:解散事由の発生と同時に、清算人が就任します。清算人は、会社の財産を整理し、債務を弁済し、残余財産を株主に分配する役割を担います。
- 解散登記:解散事由発生後、速やかに解散と清算人の就任を登記します。
- 清算手続き:
- 財産目録・貸借対照表の作成:清算開始時の会社の財産状態を把握します。
- 債権者保護手続き:官報公告や知れている債権者への個別催告を通じて、債権者に債権を申し出るよう促します。これは、債権者が不利益を被らないようにするための重要な手続きです。
- 債権の取り立てと債務の弁済:会社が有する債権を回収し、全ての債務を弁済します。
- 残余財産の分配:債務を全て弁済し終えた後、会社に残った財産があれば、株主の持株比率に応じて分配します。
- 清算結了登記:上記全ての清算手続きが完了した旨を登記し、会社の法人格が消滅します。
2. 解散登記の具体的な手続き
解散登記は、会社の登記を管轄する法務局に対して行います。
2.1. 登記すべき事項
解散登記において登記すべき事項は以下の通りです。
- 解散の旨:会社が解散したこと。
- 解散年月日:解散の効力が発生した日付。
- 解散事由:解散に至った具体的な理由(例:株主総会の決議、破産手続開始の決定など)。
- 清算人の氏名または名称および住所:清算人個人の氏名と住所、または清算人となる法人の名称と所在地。
- 清算人の代表権に関する定め:清算人が複数いる場合に、誰が会社を代表するのか(例:代表清算人の氏名)。
2.2. 登記申請期間と申請先
- 申請期間:解散の効力が発生した日(通常は株主総会の解散決議日)から2週間以内に申請しなければなりません(会社法第926条)。この期間を徒過すると、過料の対象となる可能性があります。
- 申請先:会社の本店の所在地を管轄する法務局に申請します。
2.3. 申請人
解散登記の申請は、会社の清算人が行います。清算人が複数いる場合は、代表清算人が申請人となります。司法書士に依頼する場合は、清算人からの委任を受けて司法書士が代理で申請します。
2.4. 添付書類
解散事由によって添付書類は異なりますが、最も一般的な「株主総会の決議による解散(任意解散)」の場合の主な添付書類は以下の通りです。
- 登記申請書:法務局のウェブサイトからひな形をダウンロードできます。
- 登録免許税貼付用台紙:登録免許税分の収入印紙を貼付します。
- 株主総会議事録:
- 解散決議:会社法上、会社の解散は特別決議事項であり、議決権を行使することができる株主の議決権の過半数を有する株主が出席し、出席した当該株主の議決権の3分の2以上の賛成が必要です。
- 清算人選任決議:解散と同時に清算人を選任する決議も行われます。通常は取締役が清算人となりますが、株主総会で別の人物を選任することも可能です。
- 株主リスト:株主総会決議があったことを証する書面として、株主の氏名(名称)、住所、株式数、議決権数などが記載された株主リストの添付が必要です。
- 清算人の就任承諾書:清算人に選任された者が、その就任を承諾したことを証する書面です。清算人の署名押印が必要です。
- 清算人の印鑑証明書:清算人に新たに就任する者の印鑑証明書(発行から3ヶ月以内のもの)が必要です。これは、就任承諾書に押印された印鑑が実印であることを証明するため、および会社代表印(清算人の印鑑)として登録する印鑑の提出を兼ねる場合があるためです。
- 定款:定款に株主総会の招集通知期間や議事の運営に関する特別な定めがある場合に添付を求められることがあります。
- 委任状:司法書士に手続きを依頼する場合に必要です。
※上記以外にも、清算人会設置会社における清算人会議事録、外国会社の場合の代表者の証明書など、会社の形態や状況によって追加で必要となる書類があります。
2.5. 登録免許税
解散登記と同時に清算人選任登記も申請することが会社法上求められるため、これらの登記は一体として扱われ、登録免許税は合算して計算されます。
- 登録免許税額:3万円
この登録免許税は、登記申請書に収入印紙を貼付して納めます。
まとめ
今回は解散登記をみていきました。
前述した通り、解散登記がされたからといって、すぐに会社の法人格が消滅するわけではないですが、債権者等を巻き込む重要な手続きとなるため、周知を図りながら計画的に行っていくことがとても重要になります。