第三者のためにする契約による申請とは、法律上の概念であり、契約の当事者ではない第三者に利益を与えることを目的とする契約です。

この契約形式は、契約当事者の一方が相手方に対して特定の利益やパフォーマンスを提供することを約束し、その利益が第三者に帰することを意図しています。

特徴

第三者のためにする契約では、以下のような特徴があります。

  • 契約当事者: 通常、契約には申し込み者と応諾者の二者が関与しますが、第三者の利益を目的とする場合、契約の効果が第三者に及ぶことになります。
  • 第三者の権利: 第三者は、直接的な契約当事者ではないにもかかわらず、契約によって与えられる利益を享受する権利を得ることになります。
  • 権利の保護: 多くの法体系では、第三者がその利益を求める権利を保護するためのメカニズムが存在します。これは、契約当事者の間で何らかの不正行為があっても、第三者の利益が守られるようにするためです。

具体例

  • 生命保険契約:保険契約者が保険会社と契約を結び、保険金の受取人として第三者を指定する場合。このとき、受取人が記載された第三者となります。
  • 贈与契約:贈与者が受贈者に資産を与えることを約束し、その資産がさらに第三者に渡ることを目的とする契約。
  • 信託契約:信託により、信託者が受託者に資産を預け、その資産運用の利益を第三者が享受する。
  • 不動産契約:以下に記載する売買契約に関する内容。

第三者のためにする契約による登記申請とは

不動産取引において本来であれば売主(A)から中間者(B)へ、さらに最終取得者(C)へと順次所有権の移転登記を行うべきところ、中間者(B)を経由せず、売主(A)から最終取得者(C)へ直接所有権移転登記を行う手法です。
この仕組みは、民法第537条の「第三者のためにする契約」に基づき、「AとB間」の売買契約に「所有権はBが指定する第三者(C)に直接移転する」といった特約を盛り込むことにより実現されます。

仕組みの流れ

以下、大まかな流れになります。
・AとBの間で売買契約を締結
→契約に「Bが指定する第三者(C)に対してAが直接所有権を移転する」旨の特約を付す
→Bは第三者であるCを指定
→CはAに対し、「自分が直接不動産の名義を受ける」意思表示を行う
→代金の支払い後、AからCへ直接所有権が移転し、C名義で登記申請がなされる。

実務上のポイントについて

この方法を用いる場合、AからBへの所有権移転登記とBの不動産取得税が不要(登録免許税も1回分のみ)となるため、節税効果とコスト削減が特徴です。

適切な契約文言がなければ、AからCへの直接登記はできず、形式通りBに一旦登記を移転しなければならないリスクがあるため、契約書作成時に法的整合性を慎重に確認する必要があります。

かつては「中間省略登記」と呼ばれる手法が用いられていましたが、不動産登記法改正により認められなくなりました。

その後、「第三者のためにする契約」を用いた直接移転登記が合法的な方法として公式に承認され、「新・中間省略登記」とも呼ばれています。

法的手続き

第三者のためにする契約が成立し、かつ契約上の義務が履行されるためには、一定の法的手続きが必要です。

  • 契約の明確化: 契約書において、第三者の権利およびその内容が明確に定義されていることが求められます。
  • 通知義務: 第三者が契約の存在を知らない場合、当事者は通常、第三者に通知する必要があり、それにより第三者がその権利を行使できるようにします。
  • 承諾権: あるケースにおいて、第三者は、権利を享受することを承諾する必要があるかもしれません。

法律上の問題

  • 利害の対立: 契約当事者と第三者の間で利益の対立が生じる場合があるため、事前に明確な合意が求められます。
  • 履行不能のリスク: 契約当事者が義務を履行できない場合、第三者の保護が問題となることがあります。

まとめ

第三者のためにする契約は、契約当事者以外の人物に利益を提供するための強力なツールです。適切に設計され、法的手続きを守ることで、当事者の信頼関係を維持し、第三者の権利を的確に保護することが可能です。

このような契約を利用する際は、法的な助言を受け、契約内容を詳細に検討することが重要です。